読売新聞教育ネットワーク事務局による、大学の実力2017が中央公論新社から出版された。
受験生・保護者に人気の「医・歯・薬・看護」の実情を徹底比較、各校の国家試験合格率やサポート体制も掲載します!
第6章にて、薬学部の記載がある。受験大学を選択する際の一つの目安になるはずなので、気になる方は是非チェックを。
今回は、特に留年率が高いとされる医・歯・薬学部に注目しながらデータを見ていくこととする。
目次
データで読み解く大学・学部別の留年率
※注意※留年率を公表していない大学あり
留年率50%以上
大学・学部 | % | 大学・学部 | % |
大阪・外国語 | 67.8 | 愛知県立・外国語 | 54.3 |
東京外国語・国際社会 | 65.7 | 金沢・国際(人間社会) | 52.0 |
東京外国語・言語文化 | 64.5 | 第一薬科・薬 | 51.8 |
神戸市外国語・外国語 | 56.4 | 東京神学・神 | 50.0 |
いわき明星・薬 | 55.1 | 鶴見・歯 | 50.0 |
留年率40%以上
大学・学部 | % | 大学・学部 | % |
神戸・国際文化 | 48.6 | 宇都宮・国際 | 43.6 |
国際教養・国際教養 | 48.5 | 青森・薬 | 43.4 |
日本・松戸歯 | 47.4 | 立命館アジア太平洋・アジア太平洋 | 42.2 |
創価・経済 | 45.6 | 東京・医(健康総合科) | 41.7 |
上智・外国語 | 44.8 | 明星・情報 | 41.4 |
朝日・歯 | 44.3 | 九州保健福祉・薬(薬) | 40.7 |
留年率30%以上
大学・学部 | % | 大学・学部 | % |
筑波・社会・国際 | 39.3 | 京都・法 | 33.6 |
九州・21世紀プログラム | 39.3 | 京都・文 | 33.3 |
東京・教養(後期課程) | 38.8 | 名古屋市立・医 | 32.6 |
千葉科学・薬(薬) | 38.6 | 星薬科・薬(創薬科) | 32.4 |
太成学院・経営 | 37.5 | 長崎・歯 | 32.0 |
東京・文 | 37.3 | 法政・グローバル教養 | 31.9 |
就実・薬 | 36.1 | 苫小牧駒沢・国際文化 | 31.7 |
創価・文 | 36.0 | 東京・法 | 30.9 |
日本・薬 | 35.8 | 獨協・国際教養 | 30.9 |
広島国際・薬 | 35.3 | 帝京・医 | 30.8 |
立命館アジア太平洋・国際経営 | 35.1 | 琉球・観光産業科 | 30.3 |
徳島・歯(歯) | 35.0 | 四條畷学園・リハビリテーション | 30.0 |
北海道医療・薬 | 34.6 |
始まりが留年率50%以上という恐ろしいデータであるが、中でも外国語大学等の国際・海外に関する学部の留年率の高さが目立つ。
その理由として「海外留学」が考えられる。
外国語大学は他学部よりも休学率が高く、更には就職活動と留学時期が重なる場合に、敢えて1年遅らせ就活にじっくり備えるといった学生が多いのだ。
この先は、医・歯・薬、主に薬学部について話を進めていく。
薬学部の留年率が高い理由
国家試験の難化
1番はこれだろう。
薬学生の学力低下が問題になっていることは事実ではある。しかし、4年制時代の薬剤師が現行レベルの薬剤師国家試験に全員がパスできるかといえば、それはありえない。
問題数が増えただけではなく、過去問からの再出題がなくなり、思考力が試されるような内容にシフトしている。
がむしゃらに暗記しているだけでは受かることができないのだ。
また、4年制薬剤師に受験勉強期間を聞くと、大抵3ヶ月程である。しかし、6年制薬剤師国家試験では到底間に合わない。
薬剤師免許取得の為には、多くの時間が必要となる。
過剰新設された私立大薬学部
薬学部進学は、受験生やその保護者にとても人気が高い。
その理由として、薬剤師という世間的良イメージ(将来的安定)が大きく影響していると考えられる。年間200万もの学費をかけ、子を私立大薬学部に入れたがる保護者も少なくない。
この結果、大学に入った薬学生を待ち受けるのは、大量の必須科目に追われながらの学生生活である。
大学側は学力の足りない学生をバンバン留年させ、薬剤師国家試験に受かりそうな学生だけを受験させる。
特に私立大学にとっては、薬剤師国家試験の合格率が高ければ高いほど大学のアピールになる為、数字を取ることに必死なのである。
➡【薬学部の選択】偏差値や国試合格率ではなく、「留年率」「卒業率」を見よう。
よって、留年者数を公表していない私立大薬学部も多数あるはずである。国家試験の合格率だけで、安易に大学を選んではならない。
最後に
医・歯・薬の留年者の多さから、国家試験難化などの問題も見えてくるが、この学部に共通して言えることは、将来の安定性(資格)である。
「親が医療従事者」「親に勧められた」等の理由で選ばれやすい学部であるため、保護者の希望も大きく反映されているはずだ。確かにこれらの免許は我が国において強力ではあるが、進学を決める際には家族共にリスクを負わなければならない。
研究職以外は、免許を取らなければ何も手元に残らない学部なのである。
私立大学薬学部について話をすると、ほとんどの学生が薬剤師免許取得の為に進学を決めている。しかし、薬剤師になるどころか薬学部卒業もできない学生が多くいることを肝に銘じておくべきである。
留年というのは、親子共に、金銭的・精神的ダメージを受けることになる。
しかし18歳そこらで、自分のやりたいことや将来のビジョンがはっきり見えている学生はどれほどいるのだろうか。入学して勉強についていけない、合わない、などの問題も出てくることだろう。
医・歯・薬で資格を取る為には、最低6年という認識と、国家試験に受からなければ何も始まらない、という覚悟が必要となってくるのだ。
これらのデータにあるような大学・学部を決める際には、特徴を分析し、保護者共に話し合いを重ねることが重要となってくるだろう。