【薬理】全身麻酔薬

スポンサーリンク
スポンサーリンク

目標:全身麻酔薬の薬理(薬理作用、機序、主な副作用)を説明できる。

全身麻酔薬を大まかに確認したい方は、目次を参照して下さい。

青文字をクリックすると、新しいタブで各キーワード解説が開かれます。その都度確認を行いましょう。

スポンサーリンク

目次

全身麻酔薬 [概要]

作用・作用順序

大脳→間脳→中脳→脊髄→延髄の順に麻酔作用を示すものが全身麻酔として使用される。

これを不規則的下行性麻痺という。

モルヒネのような規則的下行性麻痺(大脳→間脳→中脳→延髄→脊髄)を示すものに関しては、脊髄の前に、生命維持に不可欠な機能を含む延髄に作用してしまう。

これにより中毒症状が起きやすくなる為、モルヒネは麻酔薬として使用できないことに注意をしよう。

https://astamuse.com/

麻酔深達 経過/段階

麻酔の段階 主な作用部位 症状・特徴

第1期

(無痛・導入期)

大脳皮質知覚領 
  • 痛覚が減弱
  • 無痛分娩

第2期

(発揚期)

大脳皮質全域 
  • 意識消失
  • 見かけ上の興奮
  • 上位中枢の抑制機構の麻痺

第3期

(手術期)

中脳~脊髄
  • 骨格筋の緊張がとれる(弛緩)
  • 反射の消失
  • 深く規則正しい呼吸
  • 手術最適期

第4期

(延髄麻痺・中毒期)

延髄
  • 浅く不規則的な呼吸
  • 呼吸中枢の抑制*1
  • 血管運動中枢の抑制*2

1) 呼吸麻痺の解毒薬:ジモルホラミン

2) 血圧下降への対処薬:アドレナリン

全身麻酔薬の分類

全身麻酔薬は、吸入麻酔薬静脈麻酔薬に分類することができる。各特徴を見ていく。

吸入麻酔薬

  • 麻酔維持・深度調節が容易
  • 濃度の変化(吸入→肺胞→血中)がおこる為、導入が遅く、発揚期が長い。
【対策】導入には主に静脈麻酔を用いる。

静脈麻酔薬

  • 意識消失が強く、導入期や発揚期が短いため、速やかに手術期へ到達する。
  • 麻酔深度の調節が困難。

吸入麻酔薬

吸入麻酔薬には主に、インフルランセボフルランデスフルラン亜酸化窒素(笑気)がある。

※ハロタンは肝毒性(肝炎)が問題になったため、現在使用されていない。

※セボフルランは、インフルラン、セボフルランの出現により、あまり使用されなくなった。

吸入麻酔薬を学習する上で欠かせないパラメーターの一つに、血液/ガス分配係数がある。

血液/ガス分配係数が大きいほど血液に溶けやすく、多くのガスを必要とするため導入が遅くなる。(小さいほど、導入が速やか)

日臨床会誌 vol.30 No.3/May 2010

・最小肺胞内濃度(MAC)

皮膚切開を加えた場合に、50%が体動を示さなくなるために必要な吸入麻酔薬の肺胞濃度。値が小さいほど麻酔作用が強いことを示し、50%有効量(ED50)に相当する。

下の表より、MACが最小のハロタンが、麻酔効力が最も強いことが分かる。

  MAC 血液/ガス分配係数
ハロタン 0.75 2.3
イソフルラン 1.15 1.41~2.11
セボフルラン 1.71 0.63
デスフルラン 7.25 0.42
亜酸化窒素 105 0.47

例)亜酸化窒素

MACが大きい・・・麻酔効力は小さい

血液/ガス分配係数が小さい・・・麻酔導入が速い

<揮発性麻酔薬> イソフルラン、セボフルラン、デスフルラン

~揮発性麻酔薬の特徴~

  • ハロタンより、導入、覚醒が速やか
  • ハロタンと同等の筋弛緩、麻酔作用を示す
  • カテコールアミンに対する感受性増大作用が弱い不整脈が起こりにくい
  • まれに肝障害を起こす
ハロタンのようにカテコールアミン(アドレナリン、ノルアドレナリン等)の感受性増大作用が強いと、頻脈、心室細動などの発現リスクが高まるが、~フルラン薬は弱い。

<各特徴>

 セボフルラン
  • ハロタンと同様に悪性高熱症を起こすことがある
  • 頻脈を起こす
悪性高熱症・・・全身麻酔における重篤な作用。骨格筋におけるリアノジン受容体のカルシウム誘発性カルシウム遊離機構の亢進により、筋収縮(痙攣)と高熱が引き起こされる。対処法としては、ダントロレンを用いる。
 イソフルラン
  • 気管支拡張作用により、気管支喘息の患者にも用いやすい
  • 刺激が少なく、導入・維持 共に使用される
  • 徐脈を起こす
 デスフルラン

  • 2011年に製造承認を取得
  • イソフルランのα‐炭素結合のClをFで置換
  • 腎・肝臓でほとんど代謝されないため、安全性が高い
  • 気道刺激性が強いため、麻酔導入には適用できない

<ガス麻酔薬> 亜酸化窒素(笑気)

N2O

  • 麻酔作用は弱いが、導入は極めて早い
  • 鎮痛作用が強い
  • 無痛分娩、歯科麻酔に応用される
  • 酸素欠乏に陥る
酸素20%以上で用いること。

静脈麻酔薬

吸入麻酔薬と併用することにより、互いの欠点を補うことができる。

<バルビツール酸系> チオペンタール、チアミラール

  • バルビツール酸誘導体
  • 脂肪組織に再分配されるため、作用時間は短い(超短時間型)
  • 全身麻酔の補助薬として使用
  • ヒスタミン遊離作用があるため気管支喘息患者には禁忌
語尾が「○ール」

<非ベンゾジアゼピン系> プロポフォール

  • 超短時間型の薬物
  • GABAA受容体を介し、GABA作用を増強する
  • チオペンタールのような蓄積はほぼ起こらず、肝臓で代謝される
  • 導入に用いることが多いが、持続投与による麻酔維持も可能
  • 胎盤通過と乳汁移行が高く、妊婦には添付文書上禁忌

<ベンゾジアゼピン系> ミダゾラム、ジアゼパム、フルニトラゼパム

  • 抗痙攣薬としても使用
  • GABAA受容体のClチャネル複合体のベンゾジアゼピン結合部位に結合

<解離性麻酔薬> ケタミン(麻)

  • 麻薬
  • グルタミン酸NMDA受容体の非競合的遮断薬
  • 痛覚は消失するが、大脳辺縁系を賦活化する
  • 覚醒時には悪夢・幻覚・興奮が起こる場合がある(他の静脈麻酔薬にはない副作用)

麻薬補助薬

麻酔導入において、治療を安全にかつ円滑に行うために麻薬前投与薬を用いることがある。

薬の投与目的と一緒におさえていこう。

静脈麻酔薬

基礎麻酔として、速やかに第3期に移行しやすくするために静脈麻酔を使用する。

不安除去・ベンゾジアゼピン系薬

ベンゾジアゼピン系薬を使用する。手術に対する不安を軽減させ、手術前に十分な睡眠をとってもらう。

麻酔による嘔吐抑制・クロルプロマジン

制吐、抗不安の為、D2受容体遮断薬であるクロルプロマジンを使用する。

鎮痛・モルヒネ、ペチジン、ペンタゾシン

鎮痛薬項目にて解説を行う。

抗不整脈薬・プロプラノロール

β受容体遮断薬であるプロプラノロールを用いる。

気道分泌抑制、過度な徐脈抑制の予防薬・アトロピン、スコポラミン

ムスカリン受容体拮抗(抗コリン作用)を示すアトロピン、スコポラミンを投与する。

胃酸逆流防止・ファモチジン、ラニチジン

アトロピンに加え、H2受容体遮断薬であるファモチジン等を投与することにより、消化管出血リスク軽減や胃酸逆流の防止となる。

筋弛緩薬・ベクロニウム、スキサメトニウム

筋弛緩薬の項目で解説を行う。

スポンサーリンク